奥様の「これ、いいわよ」は伝染する。亭主は「もういいよ」と応戦しようではないか。
女性の感性は素晴らしく、男では到底理解不能である。特に奥様同士で使用される言葉は、極限まで削ぎ落とされている。例えば、一人がシミが薄くなったような「気がする」と言えば、周りの女性は、「気がする」「気がする」の大合唱となるものだ。また、「これ、いいわよ」と言うだけでスーパーの陳列棚からその商品全てが消えるといった具合である。 愛妻に至っては、「友達からこれいいわよと聞いたモノを買ったけど、これって一体何に使うのかしら」という始末である。用途などどうでもよく、「これいいわよ」という言葉に体が反応してしまうのだ。 ご近所のダンス好きの奥様の影響だろうか、きっと「これいいわよ」と誘われたに違いない。一時はフラダンスに凝っていたかと思えば、次はジャズダンスであった。どれもこれも中途半端なヘタうまで、習って帰って来て私にレクチャーするのだけは、やめて欲しいものだ。ジャズダンスは椅子に座って手だけ動かすものとは知らなかったが、ダンス教師は一体、何歳なのだろうか。 それはまだ許せたが、ベリーダンスにはほとほと驚いた。ワンツー、ワンツー、と腰をクネクネさせ、息が切れるのだろうか、「フン、フン」と要所要所で甘い声を出すのが恐ろしかった。中東の踊りを日本で流行らす魂胆は一体何であろうか。
それだけでも充分なのに、最近、「ポールダンス」に転向したらしいのだ。ネーミングからでは、どんな踊りか分からないので、今のところ安心しているが、つい先日、忘れ物をして家に帰った時、見てはいけないモノを見てしまったのだ。妙に色っぽい音楽が流れているリビングの真ん中に、物干し竿を立て、その物干し竿にお尻をこすりつけたり、両手で握りしめ、足を持ち上げたり、開いたりと、確か若い頃、場末の温泉で見たストリッパーのような動きであった。「もう、いいよ」心の中でつぶやきながら車に猛ダッシュで逃げ帰った私であった。「ポールダンス」って一体誰のために、何のためにするダンスでしょうか。神様、教えて下さい。
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